自宅がスマート化するとどうなる?家電ジャーナリストが語るIoT化のすすめ

自宅にあるすべてのモノがインターネットにつながり、家電はすべてインターネット経由で操作できるようになる。これは、IoT化が進んだ世界として長年描かれてきた未来予想図ですが、現在の家電ではどの程度実現しているのでしょうか。

最新の家電に精通しWeb、雑誌、テレビ、ラジオなど多方面で活躍するIT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さんに、スマート家電(IoT家電)のトレンドとオススメの製品を聞いてみました。

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IT・家電ジャーナリスト / 安蔵 靖志 氏

エアコンをIoT化すれば
猛暑も便利に乗り切れる?

――安蔵さんはIT・家電ジャーナリストという肩書でご活躍されています。ご自宅などではどのようなスマート家電(IoT家電)を使われているのですか?やはり未来のモデルルームのようにスマート化されているんでしょうか?

安蔵:いや、さすがそこまでではないですよ(苦笑)。私自身、スマート家電はいくつか利用していますが、至って普通の家です。使用例として、エアコンにはIoT対応のエアコンと一般的なエアコンをスマート家電リモコンでIoT化して使っています。

いろんなスマート家電のメリットでもありますが、IoT対応のエアコンで何ができるかと言うと、最大の特徴はスマートフォンで遠隔操作できることですね。例えば暑い日は、家に到着する前にエアコンのスイッチを入れておいて、家に帰るとすぐに涼むことができますし。

 

――それは便利そうですね。猛暑日に汗だくで帰宅して、家の中がすでに涼しいとうれしいですね。

安蔵:そうなんです。便利なのは夏だけじゃないですよ。春先でも、時々急に気温が上がる日ってありますよね。ペットを飼っているご家庭だと、そんな日はエアコンをつけて外出すればよかったと心配になることもあると思います。そんな時にエアコンがスマートフォンから操作できるのはメリットが大きいです。

同じように、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの自宅のエアコンもIoT化しておいて、見守り対策に使うこともできます。室温を遠隔地から確認したり、自宅にいることがわかれば自動的にエアコンをつけるように設定したりという使い方ですね。お年寄りの中には、暑さに鈍感になって、気づかないうちに熱中症を発症する人もいますから。

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IoT対応の家電を揃えるのは大変
「スマート家電リモコン」がお手軽

 

――なるほど。暑い部屋なのになかなかエアコンをつけない方も多いですから、それは役立つ機能ですね。でも新しく買おうと思っても「今のエアコンが使えるのにもったいない」という方も多いのではないですか?

安蔵:先ほど名前だけ触れましたが、そういう方には一般的なエアコンがIoT化できる「スマート家電リモコン」がオススメです。

これは、赤外線リモコンに対応している家電であれば、部屋中の家電をすべてIoT化できるというものです。エアコンだけでなく、テレビや照明も赤外線リモコン対応のものが多いですよね。それを全部IoT化しちゃうんです。

仕組みとしては、スマート家電リモコンを通じて、赤外線リモコンに操作指示を送るというものですね。もちろん、スマートフォンから遠隔操作できるので、例えば高齢の両親の部屋のエアコンを強制的にオンにすることもできますよ。

あとは、そのスマート家電リモコンをいま流行りのスマートスピーカーに接続すれば、話しかけるだけで家電が操作できますね。「Alexa、エアコンを28度に設定して」「OK Google、テレビの1チャンネルをつけて」といった具合です。便利ですよ。

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キャプション:安蔵氏が使用するスマート家電リモコンのモバイルアプリ画面

 

――まさに未来のモデルルームですね。寝るときも、1つひとつのリモコンを探し回ることなく、スマートスピーカーに話しかけるだけですべての電源を消すことができるというわけですね。

安蔵:はい。あとこれは家の防犯対策にも使えますね。旅行中に遠隔地から留守宅の照明を一定時間つけておくといった設定もできますから。

値段を気にされる人もいるかも知れませんが、スマート家電リモコンはいろんなメーカーから出ていて、どれも1万円前後くらいですね。最初からIoT対応のスマートエアコンやスマート照明を購入するよりかなりお手頃で、簡単に複数の家電がIoT化できます。

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家電がスマート化すれば
見えないものも「見える化」できる

――なるほど、これならこれから家電をIoT化したい人にもとっつきやすいですね!安蔵さんは他にはどんなスマート家電をお使いですか?

安蔵:空気清浄機ですね。最近の上位機種はIoT対応のものが多くて、スマートフォンと連携して空気の状況を時系列でグラフ表示して確認することができます。

ポイントはその「見える化」ですね。空気は見えませんから、空気清浄機は効果が見えにくい製品です。普及率がまだ40%程度と言われているのも、こうしたことが関係しているのではないかなと思っています。

花粉症やハウスダストなどのアレルギーに悩んでいる人であれば購入を検討すると思いますが、例えば「PM2.5がヤバい」と言われても、一般の人はピンと来ませんよね。それが、具体的な数値によって実際に空気がきれいになっていることがわかると、ありがたみも感じます。私の自宅では、キッチンで料理している時に煙のせいで一気に数値が上がることもありますね。それで急に空気清浄機が動き始めると、ちゃんと仕事をしてるなと感じます(笑)

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キャプション:安蔵氏が使用する空気清浄ファンのモバイルアプリ画面。空気の状態をモニタリングできる

 

――料理という話が出ましたが、そういえばキッチン家電もスマート化が進んでいますよね。

安蔵:そうですね。例えば、スマートフォンアプリでレシピをオーブンレンジに転送し、調理を支援するといったものがあります。私も使っていますが、まだIoTという面では活用しきれておらず、メーカー側もユーザーへの利点を検証中といったところでしょうか。

あとキッチン関連のスマート家電だと、海外の製品に面白いものが多いと感じますね。いまワイン愛好家の間で注目されているのは、スマートデキャンタですね。ワインは空気を通すことで味にまろやかさが出るので、デキャンティングするのですが、そのデキャンティングの適切な空気量などがワインの銘柄ごとにデータ化されていて、最適な状態でワインが飲めるようになるというものです。

また、グラスの中にワインを注ぐと、それをセンシングするといったものもあります。自分の好みの味かどうかを答えていくと、おすすめのワインを提案してくれるんですよ。

 

数千円から手軽に試せる
スマートウォッチもおススメ

――キッチン関連以外で気になる海外の製品はありますか?

安蔵:最近スマートウォッチが普及しつつありますが、アジア圏の製品の中には驚くほどコストパフォーマンスの良いものがありますね。私も時々心拍数や活動量などを測る安価な製品を購入していますが、若干の誤差はあっても機能性は高いと感じています。

こういった製品で計測する数値は、毎日継続して日々の推移を把握することが重要です。つまり、絶対値よりも相対値が把握できればいいので、非常に高精度な数万円の製品でなくても、案外、気軽に使える数千円の製品でも十分だということが多いんです。

――数千円でスマートウォッチが手に入るんですね。スマートウォッチといえば某社の数万円単位のものしか知りませんでしたが、いろいろあるんですね。

安蔵:さまざまなメーカーから出ていますよ。数千円の製品でも当然のようにスマート化されていて、アプリで日々の活動量の推移が把握できるので便利です。こういったものは消耗品でもありますし、安価なものから試しに使ってみるといいと思いますよ。

――お話を聞いていると、どんどんほしいものが増えてきそうです。思ったよりスマートな世界は身近で手軽なものなんだとわかりました。本日はありがとうございました!

プロフィール
安蔵 靖志(あんぞう やすし)
IT・家電ジャーナリスト 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)。AllAbout
家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ〜ンの家電ソムリエ」に出演中。その他ラジオ番組の家電製品リサーチや構成などにも携わっている。